「東京医大の研究」特設サイト
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「患者に優しい医療(低侵襲医療)」の実現に向けた研究活動

「患者に優しい医療(低侵襲医療)」
実現に向けた研究活動

12 その他の新規治療法?診断法の開発 Research

Research

微生物学分野 【NEW】病原体指向型ナノドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発と
治療応用に向けた取り組み

当分野では、病原体指向型ナノDDSによる低侵襲治療の開発として、抗真菌薬アムホテリシンBの副作用軽減と抗真菌活性の向上、並びにヒトが体内に保有するmiRNAを用いた核酸医薬品の開発を行なっております。特に命に関わるカビの感染症(真菌感染症)では、ヒトと真菌とが生物学上近縁であることから、抗真菌薬を真菌にのみ効かせることが困難であり、ヒトに対して高い毒性を示すことが問題となっています。薬剤を真菌に効率よく送達させる真菌指向型ナノDDSを開発したことで、抗真菌薬の効果をより高め、ヒト細胞に対する高い毒性を減らすことができることを明らかにしました。さらに、抗真菌薬だけでなく、ヒトが元来保有するmiRNAをこのDDSに搭載することで、真菌の病原因子を調節できることを示しました。これらの技術を発展させることで新たな感染症治療法の確立を目指しています。

【関連HP】
東京医科大学 微生物学分野
研究内容
東京医科大学 プレスリリース(2025.5.26)
東京医科大学 プレスリリース(2024.8.21)
【研究実績に関する主な論文】
2025年5月 2024年10月

消化器内科学分野 切除不能膵癌に対する強力集束超音波(HIFU)治療開発

膵がんは近年増加しており、これまで早期診断に務めているものの切除不能膵がんが60%前後を占めているのが現状です。切除不能の膵がんに対して化学療法あるいは化学放射線療法が行われますが、満足しうる成績が得られていないのが現状の難治がんです。
そこで我々は、切除不能膵がんに対する治療効果と症状を改善することを目的に、強力集束超音波HIFU (ハイフ) 療法を開発しました。HIFU療法は超音波を用いて行う治療法で、放射線被曝がなく、針や麻酔なども必要としない低侵襲の治療法で、安全かつ苦痛なく短時間に施行可能です。これまで自由診療でHIFU治療を行っていましたが、この度、切除不能膵がん患者を対象としたHIFU治療の国内治験を開始致しました。詳細については、右記関連HPをご参照ください。

生化学分野 【NEW】ビタミンK2を用いた急性骨髄性白血病の新規治療法の開発

急性骨髄性白血病は高齢者に多い白血病です。最近では新しい分子標的薬であるベネトクラクスを用いた治療が強い化学療法を受けられない患者さんに用いられるようになり、高齢患者さんの治療成績が大きく向上しました。しかし、ベネトクラクスが効かない患者さんが3割ほどいると言われています。生化学分野は、本学の血液内科学分野、そして新百合ヶ丘総合病院の田内哲三医師との共同研究で、ビタミンK2を服用している患者さんにおいてベネトクラクスを用いた治療成績が向上する事、また、その分子メカニズムの一部を明らかにしました(Tauchi et al., PLoS ONE 2024)。現在は、そのメカニズムの詳細な解析や臨床検体を用いた研究を進めております。

【関連HP】
東京医科大学 分子標的探索センター
【研究実績に関する主な論文】
2024年7月

消化器外科学分野(茨城医療センター) 患者に優しい手術合併症軽減への取り組み

患者に優しい低侵襲外科治療は、腹腔鏡下手術やロボット手術のような痛みや出血軽減以外に手術における合併症をいかに減少させて体への負担を減らすかも重要な要素です。当分野では手術における合併症軽減に向けた周術期における因子解析を行い、術前からのその指標づくり、因子解析を研究し、周術期合併症軽減につなげる指標、因子を研究しています。現在は、合併症軽減を目指して、各癌腫における尿中タイチンとサルコペニア、周術期栄養指標との関係、術後の炎症性メディエーターと合併症との関係、術前手術シミュレーションによる手術侵襲の軽減を研究しています。

【分野HP】
東京医科大学 消化器外科学分野
(東京医科大学茨城医療センター 消化器外科)
【研究実績に関する主な論文】
2024年6月 2022年10月

消化器?小児外科学分野 【NEW】進行直腸癌に対する集学的治療と低侵襲手術の融合による機能温存手術の開発

高度に進行した直腸癌に対する外科的治療では、膀胱や前立腺など周囲臓器の広範な切除や人工肛門の造設が必要となることがあり、これが術後のQOL低下につながる大きな課題となっています。これに対し、我々は化学療法や放射線療法を組み合わせることで腫瘍の局所進行を制御し、機能温存を目的とした手術の有効性を臨床的に検討?報告してきました。さらに、ロボット支援手術の特性を活かし、微細な解剖学的構造に基づいた高い根治性と機能温存、出血量の少ない術式、ならびに人工肛門を回避可能な新たな術式の開発にも取り組んでいます。本研究の目的は、集学的治療とロボット支援手術を融合させることで、高度進行直腸癌に対し根治性を担保しつつQOLを維持?改善できる低侵襲治療を確立することです。

【分野HP】
東京医科大学 消化器?小児外科学分野
【研究実績に関する主な論文】
2024年4月 2023年5月

循環器内科学分野 心房細動に対するパルスフィールドアブレーションの確立

近年、不整脈疾患に対する治療は大きく発展していますが、特に心房細動の根治治療であるカテーテルアブレーションは有効性が認められ多くの施設で行われています。ターゲットとなる部位を高周波によって焼灼するのがアブレーションの基本ですが、冷凍凝固やレーザーなど新たなエネルギーを使用した治療方法が開発されています。ただし、いずれのエネルギーも熱的アブレーションであり、熱伝導によって周辺組織への障害は避けられません。そこで、この問題を解決すべく、パルスフィールドという新たなエネルギーを使用したアブレーションが開発されました。パルスフィールドアブレーションは心筋細胞を選択的に障害することができるため、食道損傷や横隔神経障害がなく、その安全性が高いことで注目されています。当院では全国に先駆けていち早く導入しており、その治療を確立していきます。

【分野HP】
東京医科大学 循環器内科分野
【研究実績に関する主な論文】
2023年6月23日 2022年2月

生化学分野 リソソームを標的とした新たながん治療戦略

リソソームは老廃物を処理するだけの細胞内小器官と考えられていましたが、それに加え、細胞内の栄養状態を感知し、代謝を切り替える小器官として、細胞恒常性の維持に重要な役割を担っていることが明らかになってきました。がん細胞は、生存に適さない低酸素?低栄養状態においても無秩序に増殖し、浸潤?転移を起こしますが、そのエネルギー確保のために、正常細胞と比較してリソソームが過剰に発達し、リソソームへの依存度が高い場合が多く認められます。がん細胞の特徴を標的とし、正常細胞への影響を最小限に抑えることで、薬物療法の副作用低減に繋がる可能性があり、当分野では既存薬のリポジショニング(別疾患への転用)を試みることで、迅速な臨床応用を目指して研究を進めています。

【関連HP】
東京医科大学 分子標的探索センター
【研究実績に関する主な論文】
2023年5月【UP】 2022年12月

細胞生理学分野 先天性心疾患の病態機序の解明と新規治療法の開発

先天性心疾患は約1%に発症しますが、この中でも動脈管開存症は500人に1人との頻度の高い疾患です。また、近年増加傾向にある未熟児では動脈管開存症の割合は30%を超えます。動脈管は胎児期には生命の維持に必須ですが、出生直後から閉鎖に向かうことで出生後の環境に適応してゆきます。動脈管開存症ではこの閉鎖機構が障害され、重篤な合併症を引き起こし生命予後を左右します。我々はPTGER4分子に着目し、ヒアルロン酸やFibulin1といった細胞外基質やリシルオキシダーゼによる弾性線維の架橋の制御が動脈管の閉鎖に重要であることを示し、PTGER4分子制御による動脈管開存症の新規治療法を開発しています。

【分野HP】
東京医科大学 細胞生理学分野
【研究実績に関する主な論文】
2023年3月1日オンライン  
2021年7月31日オンライン

消化器内科学分野 不可逆電気穿孔法( Irreversible Electroporation:IRE)の肝癌への治療応用

肝がんの穿刺局所治療として、ラジオ波焼灼療法(RFA)やマイクロ波焼灼療法(MWA)が本邦において広く行われていますが、これらは熱の力によりがん組織を熱凝固し壊死に導く治療法です。しかし血管近傍のがんは血流による冷却効果(heat sink効果)によりがんの治療が不十分になることがあります。そこで、我々は肝細胞がんの治療に、不可逆電気穿孔法治療(IRE)を用いる研究を進めています。これは、熱の力でなく電気バルスによりがんの細胞膜にナノサイズの穴を生じさせ組織をアポトーシスに導く治療法であり、血管や胆管に隣接するがんに対しても、安全かつ効果的な治療が可能です。現在本治療法は、先進医療Bとして行っております。

【関連HP】
東京医科大学病院 プレスリリース
「ナノナイフ(IRE)による肝がん治療、先進医療制度承認へ」
【研究実績に関する主な論文】
2023年1月

耳鼻咽喉科?頭頸部外科学分野 切除不能な再発頭頸部癌に対する光免疫療法の導入とQuality of Life向上への挑戦

頭頸部がんは解剖学的に重要な機能を司る器官を多く有する領域に発生する腫瘍であり、その進行により発声、嚥下、咀嚼、呼吸等に機能障害をもたらします。
光免疫療法は、がん特異的抗原に対する抗体と光感受性物質の複合体の薬剤を投与し、標的病変に直接レーザ光を当てることにより、正常細胞への影響を抑えて、抗腫瘍効果をもたらす治療法です。世界に先駆け、日本の頭頸部がんでの実診療下で治療ができるようになっていますが、機能への影響に関するデータは限られております。そこで、我々は従来の治療では失わざるを得なかった機能の温存が可能なのか、本治療前後でのQuality of Lifeの変化を調査することでベネフィットを検討しています。

【分野HP】
東京医科大学 耳鼻咽喉科?頭頸部外科学分野
【研究実績に関する主な論文】
2022年9月11日